良い病院を選ぶ5つの方法「医療・介護・福祉連携」
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長年、医療・介護の現場で働いてきた私が「医療・介護・福祉」連携の視点からご説明します。
目次
地方都市の現状
突然ですが、私が在住する下関市の高齢化率が下表になります。
平成29年6月1日現在の下関市高齢化率(65歳以上の人口割合)
令和3年7月31日現在の下関市高齢化率(65歳以上の人口割合)
男性:29.6% 女性:37.6% 合計:33.9%
男性:31.6% 女性:39.6% 合計:35.9%出典:下関市公式ウェブサイト
日本の総人口に占める高齢化率は26.7%(2015)28.7%(2020)なので、下関市は特に高齢化率が高い地域であることが分かります。
下関市の高齢化率(35.9%)とは、日本全国の場合では、2040年強で到達(上図赤矢印)すると予想されています。つまり、日本全国が約20年後に迎えるであろう「超高齢化社会」に既に突入している地域が下関市なのです。
この「超高齢化社会」を迎えている下関市では、これから日本全国が迎えるであろう「超高齢化社会」にどのように対応していくのか、試金石になる地域であるともいえます。
入院期間の短縮と医療・介護・福祉連携の重要性
現在、国は増大する医療費の抑制を目的として入院期間の短縮(コンセプトにて説明)を進めています。以前であれば一つの医療機関にて、治療、看護、リハビリテーションをじっくりと時間をかけて行うことができました。
しかし、現在は治療を専門的に行う医療機関(急性期)、リハビリテーションを専門に行う医療機関(回復期等)、療養を行う福祉施設(維持期)など各機関・施設の機能(役割)分化が進むことになりました。
たしかに一つの医療機関内であれば、必要な連携をスムーズに行うことができます。しかし、所属も立地もバラバラな医療機関が連携することは簡単ではありません。
必然的に上図のように医療(急性期・回復期)・介護・福祉の連携が重要となってきます。結果、良い病院とは「医療・介護・福祉」の連携が行えている病院とも言えます。
医療・介護・福祉の連携会議
当然、各地域でも「医療・介護・福祉」連携の重要性を認識しており、連携会議なるものが多く開催されています。
私自身も連携会議に参加することで、参考となる意見が沢山あったのですが、特に印象に残ったのが「医療と介護・福祉の連携」についてです。
ある事例検討では、「入院中から住み慣れた場所を意識した関わりが出来ていたら、もっとスムーズに良い状態で退院できたのでは?」医療と介護・福祉の連携不足を指摘する声が多く挙がっていました。
私自身も同様のケースを何度も経験したことがありますので、この事例は決して珍しいケースではありません。
適切な連携が出来ているのかの見分け方
患者さんの立場からすると、各医療機関(施設)間にて適切な連携が行えているか否かは、「適切な医療・介護・福祉を受けることが出来るが否か」に直結する重要な問題となります。
そこで、各施設が「連携」にどの程度積極的に取り組んでいるか判断するための方法を以下に説明します。
①医師・看護師・リハビリが転院先の情報にどの程度詳しいのか?
病院には、入退院の調整を行う「医療ソーシャルワーカー(以下MSW)」といわれる専門家が配置されています。
MSWは入退院に関わる情報に精通しています。特に、多くの患者さんの転院先となる、同地域のリハビリテーション病院に関する情報には強いと思われます。
そこで、敢えてその他の病院職員(医師、看護師、リハビリ)に同地域のリハビリテーション病院について「〇〇リハビリテーション病院はどのような病院ですか?」と質問してみましょう。
「情報が全くない」「良い面だけ・悪い面だけを一方的」「取り合ってもらえない」などの反応が返ってきた場合は、病院全体としては、「医療・介護・福祉連携」に積極的ではない可能性が考えられます。
理想的な反応の一例としては、各々のリハビリテーション病院の良い点と課題を同じだけ挙げることが出来ることです。
例)⇒「〇〇リハビリテーション病院の良い点は、交通の便が良くてご家族がお見舞いに行く際も負担が少ないでしょう」「課題としては、リハビリスタッフの数が少ない為、土日のリハビリがお休みになる可能性があります」。
病院の各専門職は自身の専門分野に関しては当然詳しい方ばかりです。しかし、冒頭で述べたように今は「医療・介護・福祉連携」を無視することができない時代になってきているのです。
②患者さんや家族を加えたカンファレンスが早期から多く行われているか?
特に在宅に退院する場合は、入院中と比べると専門家による多くの支援を受けることが難しくなります。よって、患者さんや家族自身がより「主体的」に日々の生活に取り組むことが求められます。
つまり、患者さんや家族自身が退院後の生活の「主役」であり「チームの一員」であることを病院側が意識して、早期から多くのカンファレンスへの参加の促しを行うことが重要となるのです。
③カンファレンスに外部関係者(介護支援専門員・かかりつけ医)が参加しているか?
高齢者の場合などは、入院前よりかかりつけ医や担当の介護支援専門員(以下CM)をもっているケースも多くあります。一般的には、退院後はまた、同じかかりつけ医やCMにお世話になることになります。
通常、病院などは外部関係者が入りづらい環境にありますが、カンファレンスに積極的に外部関係者が参加している病院とは、「医療・介護・福祉連携」を重要視していると判断することができます。
④病院職員が前病院の状況をどれだけ把握しているか?
病院から転院や退院をする場合は、医師や看護師、リハビリによる「情報提供書(紹介状)」が作成されます。「情報提供書」には入院時の情報がそれぞれの立場から詳しく記載されており、病院が変わっても治療内容に一貫性を保つことができます。
担当の医師や看護師、リハビリの方に前病院での自身の状況を聞いてみましょう。正確に答えることが出来るか否かも良い判断材料となります。
⑤入院中にリハビリが患者さんの在宅・地域に何度出掛けたか?
リハビリ関連の職種は患者さんの在宅や地域に関わる機会が多くなります。具体的には以下のケースが挙げられます。
- 「入院初期の家屋調査」⇒入院初期に退院先の環境を調査することで、より実践的なリハビリテーションを早期から実施。
- 「院外練習」⇒患者さんと一緒に退院先の環境にてリハビリテーション(自宅内での動作練習、自宅周辺の歩行練習、バスの乗降練習、買い物練習等)を実施。
- 「退院前の家屋調査」⇒CMや住宅改修業者とも同行して、患者さんの能力に応じた住宅改修(手摺り・スロープ等)の検討を実施。
- 「退院後訪問調査」⇒患者さんの退院後、1週間や1か月後にリハビリ職員が自宅を訪問して、問題なく生活を送れているのか確認やアドバイスなどを実施。
上記の項目は全てが診療報酬として請求できる訳ではありません。つまり、「病院の収益」という側面からは効率の悪い業務と言えます。効率の悪い業務を敢えて行っているということは、それだけ在宅(介護・福祉)との連携を重要と考えていることになります。